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ケアマネ営業の始め方——ケアマネが本当に欲しいのは「福祉用具」じゃない

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福祉用具の営業を始めた頃、「営業活動って、結局何をやればいいんだ」とずっと思っていました。ノルマはあるのに、決まった型がない。

数年やっていま思うのは、出発点は「売り方」ではなく、「相手(ケアマネ)を知ること」だった、ということです。順番に書いていきます。

前提:「詳しくて当たり前」が、土俵に上がる条件

先に、身も蓋もない話をします。

ケアマネさんが利用者さんをあなたに預けるのは、あなたが感じのいい人だからではありません。「この人なら、専門家の目でちゃんと見て、適切に動いてくれる」と思えるからです。

だから、疾患の基本的な知識、身体状況に用具を合わせる力、この先どうなりそうかという予後の見立て、そして社会人としての最低限のマナーや時間の正確さ——このあたりは、"強み"ではなく、土俵に上がるための条件です。ここが欠けていると、どれだけ気配りができても紹介は来ませんし、逆に気が利くだけの人は、ケアマネから見ると少し不安です。任せた先で何が起きるか読めないからです。

この土台があることを前提に、ここからが本題です。

まず、ケアマネの「1ヶ月」を知る

営業に行く前に、相手がどんな1ヶ月を過ごしているかを知ると、見え方がかなり変わります。居宅のケアマネの1ヶ月は、だいたいこう動きます。

  • 月初(〜10日ごろ):給付管理。前月に提供されたサービスの実績をまとめ、給付管理票を国民健康保険団体連合会(国保連)へ提出します。期限は毎月10日。事務に追われる、いちばん忙しい時期です。
  • 月中:事務から現場へ切り替わる時期。利用者宅のモニタリング訪問、サービス担当者会議、各事業所との連絡調整が中心になります。
  • 月末:翌月分の利用票・提供票を作成して、利用者さんに交付します。ここもまた忙しい。
  • これに加えて、新規の相談、入退院の調整、地域の連携活動などが、日々割り込みで入ってきます。

「営業は月初を避けろ」とよく言われますが、これはこの給付管理の時期を指しています。実際その通りで、ここで商品の話をしに行っても、たいてい上の空です。避けるに越したことはありません。

ただ、この1ヶ月を眺めていると、タイミングより大事なことに気づきます。ケアマネはきちんと訪問していても、これだけ多忙だと、一人ひとりの利用者さんの細かな変化までは見えきれない、ということです。

ケアマネが本当に欲しいのは、福祉用具の紹介じゃない

モニタリングでケアマネが利用者宅を訪問するのは、原則として月に1回。きちんと訪問はしていますが、あとは事務と調整に追われていて、その一度の訪問だけでは、利用者さんの細かな変化までは気づききれないこともあります。

一方で福祉用具の相談員は、納品・モニタリング・調整で、同じ家に何度も足を運びます。利用者さんのいまの様子を、担当ケアマネより近くで見ていることが多い。

ここが、いちばんの肝でした。ケアマネが福祉用具屋に本当に期待しているのは、新商品の紹介でも、カタログの説明でもありません。自分では気づけていない現場の変化や、利用者さんの情報です。

(業者を選ぶ理由を尋ねた調査でも、上位はスピードや対応で、「知識の豊富さ」は最下位でした。知識は必要ですが、それ単体を売りにしても響かない、ということです。)

だから、やることは「報告」になる

そう考えると、営業の中身は「売り込み」ではなく「報告」になります。行くたびに、こんな話をしていました。

「先日モニタリングで伺った◯◯さん、歩行がしっかりしてきましたね」

ここで「良くなりましたね」で終わらせるかどうかが、分かれ目です。専門家の目で見れば、その疾患なら今は一時的でも、数ヶ月先に状態が落ちる可能性がある、と読める。だから、こう足す。

「ただこの先を考えると、今のうちに手すりの位置を見直しておいたほうがいいかもしれません」

これは、ただの近況報告ではなく、専門家としての"見立て"です。ケアマネさんが価値を感じるのは、ここです。様子を伝えてくれる人ではなく、先を読んで動いてくれる人。前の章で「専門性が土台」と書いたのは、この報告の中身に、それが表れるからです。知識は、プレゼンする形ではなく、報告の質として伝わります。

家族の声を拾うのも同じです。

「この前ベッドを納品した△△さん、奥さまが『最近、夫のこういうところが心配で』と話されていて……」

商品の話は一切していません。でも、行けていない現場のことを、専門家の目で見て届けている。この積み重ねが、信頼になっていきました。

そうすると、依頼は"ついで"に来る

こういう報告を続けていると、ある日ケアマネさんのほうから、こう言われます。

「そういえば◯◯さん、車いす欲しいって言ってたわ。あなた、行ける?」

「紹介してください」と頼むまでもありません。専門家として信頼されていて、現場にいちばん近ければ、利用者さんにニーズが生まれた瞬間に、真っ先に思い出してもらえる。依頼は、売り込みの結果ではなく、報告の"ついで"にやってきました。

最初の一件は、急ぎの場面から始まることが多い

とはいえ、取引のない事業所とは、この関係がまだありません。最初のきっかけは、僕の場合たいてい急ぎの案件でした。「今日中にベッドを」「自費でいいからすぐに」——すぐ動ける相手が必要な場面です。

ただ、ここでも早いだけでは足りません。急いでいる中でも、身体状況を見て正しい用具を選べるか。最初の一件で見られているのも、結局は"見立て"のほうでした。そこで一度きちんと応えられると、次の相談につながっていきます。

結局、営業って何をやるのか

やっていたのは、専門家として現場を正しく見て、ケアマネが気づいていない情報を届ける、その繰り返しでした。売ることではなく、相手が本当に欲しがっている情報を渡すこと。福祉用具営業の「営業」の正体は、そこにありました。

これから始める人に伝えたいことは、二つです。ひとつは、トークを磨く前に、目の前の利用者さんを専門家として正しく見られるようになること。もうひとつは、相手であるケアマネが、どんな1ヶ月を過ごし、何に追われ、何を欲しがっているかを知ること。営業らしい営業は、そのあとから付いてきます。

訪問の記録、そろそろ手帳とExcelから卒業しませんか。

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