モニタリング報告を「義務」で終わらせない——変化は「暮らしの話」に出る
福祉用具のモニタリングは、面倒だけれど、大事な仕事です。そして令和3年度の改定で、モニタリングの結果を記録し、それをケアマネ(介護支援専門員)に交付することが、はっきり義務になりました。
つまり報告は、「やってもやらなくてもいい親切」ではありません。全利用者に対して、きちんと行う義務です。相手が誰であろうと、ここに濃淡はつけない。それが大前提です。
そのうえで、一つだけ差がつくところがあります。義務を果たした"うえに"、どんな一手間を足すか。そして、それを、どの利用者に厚くするか、です。
義務は全員に、その上の一手間は「効く相手」に
モニタリングも、結果の報告書も、全員にやります。決められた通り、きちんと。ここは動かしません。
差がつくのは、その上です。義務の報告書を交付するだけでなく、気づいたことを、早めに一本の電話で伝える。渡すときに一言添える。——こうした一手間は、あなたの裁量の部分です。
そして、この一手間がいちばん効くのは、ケアプランを見ると分かる、"サービスが手薄な利用者"です。デイもヘルパーも入っている人は、ケアマネのもとに、すでにあちこちから様子が届いている。一方、福祉用具だけ、という人は、ケアマネにとって情報の薄い利用者で、外から様子を届ける事業所が、ほとんどいない。そこにあなたの一言が入ると、かなり価値のある情報になります。
でも、手薄な人ほど、変化は見えにくい
ただ、ここに難しさがあります。サービスが手薄な人というのは、たいてい、状態がそこまで悪くない人です。だから手がかからず、福祉用具くらいしか入っていない。
つまり、体をじっと見ても、目立った変化は、なかなか見つかりません。「お変わりないですか」と聞いても、「元気よ」で終わってしまう。
変化は、「体」ではなく「暮らしの話」に出る
では、どうやって見つけるか。コツは、体の話ではなく、その人の"楽しみ"を話題にすることです。
たとえば、旅行が好きだった人に、こう振ってみる。
「旅行がお好きだったんですよね。最近は、どこかお出かけされました?」
「それがねえ、前より歩くのが大変になってきて……。少し運動でもしたほうがいいのかしら」
この「歩くのが大変になってきた」が、拾うべきサインです。体の状態を直接聞いても出てこなかった変化が、暮らしの話からは、こぼれてくる。楽しみに行けなくなった、というのは、それ自体が、生活の力が少し落ちてきたサインだからです。
特別な観察眼は要りません。その人が何を楽しみにしているかに興味を持って、世間話をする。それだけで、状態の良い人の小さな変化も、拾えるようになります。
家の「痕跡」も、変化を語る
会話だけではありません。家に残る、小さな痕跡からも読めます。
玄関から、もう見ています。靴の脱ぎ方が、前より雑になっていないか。壁に手をついた跡——手垢や汚れが、伝い歩きの線のように残っていないか。そして、たとえば玄関に椅子がひとつ置かれていたら、それは「立ったまま靴を履くのが、しんどくなってきた」というサインかもしれません。
本人が「大変になった」と口にしなくても、暮らしの痕跡のほうが、先に教えてくれることがあります。会話と、この観察と。状態のいい人の変化は、たいてい、このどちらかに小さく顔を出しています。
「ケアプランまで見ている」は、動きで伝わる
情報の薄い利用者の、そんな小さな変化に気づいて一手間を足すと、ケアマネには、それ自体が伝わります。「この事業所は、うちが把握しきれていない利用者のことまで教えてくれる」と。
言葉でアピールしなくても、動きで分かります。義務の報告に一手間を重ねている事業所と、書類を出して終えている事業所の差は、ケアマネから見ると、思っているよりはっきりしています。
まとめ——義務は全員に、一手間は「効く相手」に
モニタリングも報告も、全員に、きちんと。ここは義務で、動きません。
変わるのは、その上に足す一手間を、どこに厚くするか。情報の薄い、サービスが手薄な人に。そして、その人の小さな変化は、体ではなく、暮らしの話から拾う。同じ一回のモニタリングを、作業で終えるか、ケアマネとの関係を育てる時間に変えるか。分かれ目は、そこにあります。